太陽が反転していました。やさしかったあの人の顔も。
光が陰り、影が際立つ。
港から心が離れていく。遠ざかる。馴染んだ岸から遠ざかる。
ここに置かれたままの私の心が壊れる音を聞きました。
爪がたてられて、それはそのまま、下に、引き下ろされて。
あらがえない痛み。それが痛みであることさえ、気づけない。
たたき続けたドアも、走り続けた夜の道も、
私がどうにかなってしまったことを教えてくれません。
月に照らされたカタチが、本当のカタチ。
誰にも、自分のことしか見えない。
私も私のことしか見えない。
あの人もあの人のことしか見えない。
私の、気狂いの始まりの日。